専業主婦、パート主婦が抱える閉そく感
「ママの求人」というサイトで連載されているゆむいさんの漫画、
「夫の扶養から抜け出したい〜専業主婦の挑戦〜」
https://mama-9jin.com/tore-mama/fuyonuke01
妻目線と夫目線が上手く描かれていて読み応えがあります。無料で現在6話まで読めます。
主人公のお父さんが女性軽視の独善的なタイプであったり、夫のご両親が自営業であったりする設定も、よくできていると思います。
私の妹は専業主婦ですが、家計は旦那さんが管理していて、「主婦は暇なんだから、仕事でもすれば」と言われるらしいです。
実際妹はスマホゲーム中毒みたいな感じですが、子どもの学校の役員の仕事などもあり忙しそう。
そして旦那さんの顔色を伺っていることが伝わってきます。
旦那さんがいいって言ったから、旦那さんが嫌そうだから、彼女の判断基準はほとんどが旦那さん。
ケンカも妹が我慢したり、チクチク嫌みを言ったりする感じで終わるようで、この主人公を思い出しました。
なんというか、話していても自分軸がないところが、似ている気がします。
もともと、妹は男性に頼りがいを求めるタイプ。
結婚した相手は野心家で仕事ができるタイプで、そういう意味では相性のよい幸せな結婚なのかもしれません。
相手が家事や育児に協力的でなくても、家族の予定や子どもの習い事などを勝手に決めてしまったりしても。
高い収入があって、引っ張っていってくれる男性は、妹にとっては理想的なのかもしれません。
女性は目立たず生意気なことを言わず、高収入の男の人に気に入られて、早く結婚するのが一番だそうで、娘にもそういう人生を送ってほしい、と妹は言っていました。
この漫画の主人公の夫はけっこうひどいことばかり言う人なのですが、
私は正直、働く側として夫の意見も理解できるのです。
仕事が辛い、やめたい、その苦しさが妻へのイライラになっているということも。
今や多くの働く男性が、長時間労働や低賃金、ボーナスカット、突然のリストラなどの問題に直面していて、「本当はこんなに無理して働きたくない」と思っています。
そしてその怒りは、働かずして自分が負担したお金で生活している人々、専業主婦や生活保護受給者などに向いています。
なぜ自分だけ大変な思いをしなければいけないのか、その怒りの一部がインターネット上で専業主婦叩きとなって表れていると感じます。
利益を独占する会社の上層部や、政治家や、一部のお金持ちにその怒りが向かないのが不思議ではあるのですが、社会的強者ではなく、弱者に怒りが向くというのは、自然な構造なのでしょう。
なんで家事ぐらいできないの?俺のお金で生活してるんだから、もっと感謝したら?という主人公の夫のイライラは、会社でのストレスが原因です。
上司から言われてる小言を妻に向けることで、ストレスのはけ口にしているとも言えます。
そんなことは家族だからといって許されないのですが、それだけ一人でプレッシャーを抱えているのは辛いだろうと思います。
父親だから、家族を養う責任がある、養うためには辛いことも我慢しなければいけないと思い込んでいる。
妻も世の女性の多くと同じように、それを当然だと思っているので、働かなくていいよ、あるいは転職して好きな仕事をしたら、と言ってあげることができない。
妻がそれを言うためには、優しさや理解力だけでなく、子や夫を養えるだけの経済力が必要です。
私は妻側の気持ちも夫側の気持ちも理解できるだけに、難しいなぁと思ってしまいました。
そう思うと、この漫画の主人公も主人公の夫も、実は同じように閉そく感と辛さを感じていることがわかります。
でも専業主婦の妻と働く夫は、立場が違いすぎて同じような辛さを抱えていたとしても、共有することが難しいのです。
妻が夫に仕事大変だよね、辛いよね、と声を掛けても、大した仕事をしたことがないお前になにがわかるんだ、と言われてしまう。
夫は土日しか育児に関わっていないから、平日子どもとふたりきりで過ごす妻の大変さがイメージできない。
それこそが、家庭内分業制の問題点なのだと思います。
もちろん育児家事に協力的で、妻に対しても理解ある夫もいるのかもしれませんが。
正社員で働く妻の夫であっても、その辺まったく理解がない人も多い気がします。
妻の方が収入も多いのに、家事育児ふつうに全て妻がこなすのが当たり前みたいな。
夫が妻の立場に立ってものを考えたり行動できるかというのは、妻が働いているかどうかよりは、夫がどう育ってきたかが大きい気がします。
男の子の父親が、母親のことをひとりの人間として対等に、尊敬と愛情をもって接しているのを日頃から見ていると、子どももそういう男性に成長します。
最初は妻の気持ちをまったく理解しようとしなかった夫が、妻が理論的に上手に話せる人だったり、こどもの病気や妻の病気で家庭の状況が変わると、変わってきたりすることもありますよね。
この漫画の場合、妻は夫がなにもやらないことが辛いのではなくて、自分の大変さや孤独感、閉そく感をまったく理解してもらえない。
それが辛いのだと思います。
同じように夫側も、妻は自分の大変さを理解していないと感じていますよね。
自分自身は今、共働きで大変ではあるんですが、夫は戦友のような感じで、仕事の辛さも、育児の辛さも、共有することができます。
それは、私にとって大きな支えです。
主人公は途中でパートを始めて、月4万円稼ぐのですが、そんな程度で働いてるって言えるの?と夫から言われます。
4万円ってことは、一回3時間、週3のパートくらいですかね。
経験のない初めての仕事、まだ手のかかるこどもを抱えて、週3回パートに行くのって大変なことです。
こどもを一時保育に連れて行くのも、用意が大変。お弁当を用意したり、着替えをまとめて連絡ノートにいろいろ書いたり、大荷物をもって嫌がるこどもを連れて行くのは、はっきり言って仕事行く前にすでにヘトヘトになるようなレベルです。
仕事も初めての接客だったりしたら気をつかうし、覚えることも多くて、立ち仕事大変だろうなと想像します。
にも関わらず4万円しかもらえず、夫からバカにされ、家事が完璧にできないことを注意される。
うーん。辛い。
しかし、夫の立場からすれば、そんな仕事、仕事のうちに入らないという。
私は正社員で、私が失敗すると、数百人、数万人のお客さんに影響がでる仕事です。
派遣の人たちに指示を出すのも私で、休めば混乱は避けられません。
子どもが熱を出しても、そう簡単には休めません。
夜中にこどもを抱えて救急病院に行って、そのまま夫にこどもを任せてフラフラで仕事に行ったりしたこともあります。
毎日綱渡りのような生活で、パートはいいなぁという夫の気持ちも理解できるのです。
仕事を休んでも代わりの人がいる、仕事をやめても生活できなくなるわけじゃない、
いいなぁ〜と。
夫は妻に前のように夢を追いかけて欲しいようです。
でも、こどもが小さい今は難しい。
じゃあもう少し大きくなったらできるのかというと、子どもが3〜4歳くらいで2人目ができたりして、結局時間ができるのは、下の子が小学校に入ってしばらくしてからだったりするわけです。
そうすると気づけば10年以上の月日が流れているわけで、正社員への再就職も難しく、今さら夢を追いかける自信もない、となってしまいます。
この、どうにもならない閉そく感や自分で稼ぎたいのに稼げない無力感は、専業主婦の方やパート主婦の方の多くが感じているのではないでしょうか。
自分で稼げないのなら、旦那に養ってもらうしかない、だから嫌なことを言われても言い返したりせず適当に流そう、それが一番楽で安全な道だから。
そうやって我慢しているうちに、どんどん夫婦の溝が大きくなってしまう。
気づけば、顔も見たくないほど相手を嫌になってしまう。
そういう夫婦が、日本にはたくさんいるような気がします。
そして、そういう夫婦のこどもは、またそういう夫婦関係をつくってしまう可能性が高いのです。
怖いですね。
働く、働かないは別として、対等な夫婦関係は、こどもの成長にいい影響を与えます。
自分の気持ちを素直に配偶者に伝え、認め合っている親の姿は、自分も気持ちを表現していいんだ。それは尊重されるものなんだ、という自己肯定感の基礎になるからです。
こどもに「自分の気持ちはちゃんと相手に伝えようね」と言い聞かせるより、
母や父であるあなたが、一番近い他人である夫(あるいは妻)に気持ちをしっかり伝え、また受け止めているか、それを子どもは見ています。
そして父親と母親の関係や接し方をみて、他人への関わり方を学びます。
共働きでなくても対等な夫婦関係はつくれます。そのためにはどうやったらお互いの気持ちを分かり合えるのか、話し合う時間をつくらないといけません。
我が家も、改めて考えたいと思った、そんな漫画でした。